ISBN:4150401012 文庫 セシル・スコット・フォレスター 訳:高橋 泰邦 早川書房 1975/08 ¥672

フランスのナポレオン時代、英国海軍に所属するホレイショ・ホーンブロワーの戦闘と冒険の物語。

士官候補生として英国の海軍の船に初めて乗り込むホーンブロワー。最初は船酔いからはじまりマストにも登れない17歳のヘナチョコだったが、クレバーな頭脳と熱い心で、数々の苦労を乗り越え、敵を撃破して、出世していく。

地中海、バルト海、大西洋・・・さまざまな海を渡り、ときにはスペインの捕虜になったり、ナポレオンにつかまったりしながら、数々の伝説を作り出していくホーンブロワーの海洋冒険物語。

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もともと、NHKのBSでイギリスのドラマ「海の勇者・ホーンブロワー」を見てからハマって、とうとう原作1〜10巻まで読んでしまいました。ますますハマりましたよ〜。

読むスピードがワクワク感についていけない感じ?
だから、船の用語とかちゃんと理解しないまま、すごいスピードで読んでしまってると思うので、もう1回じっくり読まないとな〜。

だいたい1〜3巻までの物語が、TVドラマ化されていました。登場人物とかは、びみょ〜に違うけどね。
その後の物語が、こーんな感じに展開しているとは、まさに期待通りの展開でした。

ナポレオン時代のヨーロッパの状況とかが、イギリス側の視点、しかも海軍の事情の視点から書かれているのも、すごい興味深かったです。

しかもブルボン家がスペインと関係があったとか、フランス革命によってあんな規模でフランス貴族がイギリスに流れていたとは・・・。

さて、主人公ホーンブロワーは、主人公なだけあって、すっごい魅力的な人物です。

危機に直面しても、ホーンブロワーがいるかぎり、何とかなるんじゃないか、いったいどんな突飛な作戦で危機を脱出するんだよ〜とすごいワクワク感を感じました。あとホーンブロワーがいれば大丈夫っていうヘンな安心感。

で、乗り組み員やホーンブロワーの部下たちも、同じ思いを抱いている風に書かれているところが、読者と乗り組み員の気持ちがシンクロしてるっていう、不思議な現象がけっこう良かったです。

海の男のプロフェッショナルさも、すごくよかったですね〜。

あと、ホーンブロワーがたとえ一時捕虜になったりしても、タダでは起きないシブトさも魅力。例えばスペインの捕虜になっちゃっても、スペイン語を修得し、その後にすご〜〜〜く役立ってるし、フランスに捕まっちゃったときなんか、フランスに拿捕されていたイギリスの船まで奪還し、もちろんフランス語も習得して帰ってきちゃう!さらにこのときは恋までしちゃって。

恋といえば、ホーンブロワーは女に関しては、けっこうイヤなヤツでしたね〜^^;
マリアという女性と一度結婚するんだけど、庶民的で献身的なマリアをうっとうしくてハズかしいと思っていて、ズ〜〜〜っと後悔しんの。
あげくのハテ、貴族の娘バーバラに恋しちゃって、ウジウジしているうちに、マリアが死んじゃって、バーバラと結婚。(その間にすっごい複雑な状況と最大級のウジウジあり)
バーバラと結婚したのに、今度はフランスの娘と!?その後いろいろドラマチックな展開があります。
ホーンブロワーにホレる気持ちはわかるけどね^^;

くろちゃんの満足度(満点は★5つ):★★★★☆
ISBN:4062749858 文庫 井上 夢人 講談社 2005/02 ¥860

バイトをしながらバンド活動を続けていた片桐稔は、ある日インディーズでCDを制作し、そのCDを姉のところに持っていったところ、姉は何者かに襲われており、稔も犯人に襲撃されてしまう。

姉は結局犯人に殺され、稔は何とか命をとりとめた。
しかし1ヶ月間意識不明で、目覚めると、稔は傷の後遺症か、なぜか通常の匂いを失い、犬なみのスゴい嗅覚を得ていた。
しかも、匂いが視覚となって見えるように!

その頃、バンド仲間のミッキーがなぞの失踪をとげていた。

最初は見える匂いにとまどった稔だったが、だんだんバンド仲間でもある彼女のマミなどの協力を得て、特殊な嗅覚を頼りに、ミッキーの失踪や姉を殺した犯人をつきとめようとしだす!
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犬並の嗅覚で、さらに匂いが見えるなんて、
なんてドキドキな小説なんだろう・・・!
って思い読みはじめましたが、SFやスリラーというより、
なんだか「愛の物語」でした。

そのへんは、井上夢人の「ダレカガナカニイル…」と共通するところだね。
しかも、なんか胸がキュンとなるような純粋でさりげない愛。

そして、ちょっぴり青春のにおいのする作品でした。
地面に残るニオイを集めるために「嗅探棒」なるものを作ったりしますが、そんなところが、なかなか若いプーの雰囲気が出ててグー。

私がもし作家だったら、稔のスーパー嗅覚を活かして、バンバン続作を作っちゃいそうだけど、
稔は嗅覚とひきかえに視力を失ってしまったので、それは無理そうだな。
なんだかそんなところも、キュンとなっちゃう作品でした。

くろちゃんの満足度(満点は★5つ):★★★★

龍の黙示録

2005年2月28日 読書
ISBN:4396207115 新書 篠田 真由美 祥伝社 2001/03 ¥920

柚ノ木透子は、26歳のOL。
透子は小さい頃から家族に恵まれず、父の友人であり隣の住人・高階一家に育てられた。高階の娘・翠とは姉妹同然の育ち方をした。
16歳の時に父親が本格的に失踪、しかも高階は借金6000万円の保証人になっており、その心痛が原因か、病死してしまう。
その後、透子は翠に負い目を感じ、なんとか6000万円だけでも、返そうとOLとして働きながら、水商売をしていたが、会社をクビになってしまった。

そんなときに、鎌倉の洋館に住む作家「龍緋比古」の秘書として働かないか?という誘いがあった。
「龍緋比古」はいろいろ謎の多い人物のようだったが、高給にひかれ面接に行ってみると、なんと秘書を募集したことはないと言われ、何者かの策略であることが発覚。

しかし、結局透子は龍の元で働くことになり、その頃から身辺に不思議なことが起こりはじめる。
同じ頃、東京では吸血鬼出没の噂が流れはじめ、どうやら龍や龍の同居人・ライルとも関係しているらしかった。

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吸血鬼ちっくで、びみょ〜に吸血鬼じゃない物語です。
古い洋館などが出てきて、背景はバッチリ私好みです。

吸血鬼をテーマにした小説はいっぱいあります。しかし、たとえばアン・ライスなどは、ヨーロッパやアメリカ・ニューオリンズなどが舞台。
しかし、この「龍の黙示録」は、現代の鎌倉や東京、しかも新宿が舞台になっていて、臨場感や感情移入もしやすく、それだけスリリングでした。

しかし、臨場感が感じられないのが、透子が父親の借金6000万円を働いて返そうとしているところ。
しかも、一人暮らしをしながら、基本はOLとして細々と働きながら返そうとしているところです。いったいいつのことになるやら。
サラリーマンが6000万円の家を買ったとしても、定年までに返すって感じなのに、たしか翠の結婚するまでにキッチリ返そうって言ってなかったっけ?無理すぎ〜。

しかし、透子は普通のOLにはない度胸があります。
翠を助けるために、人間じゃない敵にクイを刺してブチ殺してしまい、さらに人間じゃない龍の同居人・ライルとなんの差別もなく友情をあたためます。
透子は、人付合いは苦手らしいけど、そんだけ度胸があれば、6000万円なんか、なんとかできるかも^^;

あ、龍の同居人の少年のライルは、すごいかわいかったです。
外見は14〜5歳の少年だけど、もう1000歳ぐらいにはなってるハズなんだけどな〜。
よくぞあのピュアさを保ってられるな〜。
それも龍のおかげかも。

くろちゃんの満足度(満点は★5つ):★★★★
ISBN:4062749912 文庫 綾辻 行人 講談社 2005/02/10 ¥660

ある新興宗教の教主が殺された。
しかも、儀式のために神殿にこもっていたハズが、とんでもない場所で、首と腕が切断された状態で発見されたのだ。

しかも2ヶ月前、現教主の妻であった前教主が、奇怪な死をとげたばかり。
現教主はいろいろなところから、恨みを持たれている人物でもあった。
前教主の息子である光彦もその一人で、光彦のマンションで死体が見つかったことから、当然疑いがかけられる。

捜査を担当した一人、明日香井刑事は謎に巻かれそうになるが、偶然来ていた明日香井刑事の双子の弟が、ズバリ謎を解く!
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綾辻 行人もまた久々に読みました。

犯人がなぜ、どうやって犯行をなしとげたのか、いわゆる謎ときもので、そのへんはあんまり興味がなかったのですが、
結末は、へ〜〜〜っビックリって感じで、興味深さも感じました。

それより、明日香井刑事の双子の弟・明日香井響のキャラがナイスだったー。
なんつーか変わり者で、世捨て人っぽいんだけど、頭はメチャきれる!

明日香井刑事の奥さんもぐーでした。小さいころから、刑事の妻になるのが夢だったってあたり、みょ〜に共感。
刑事ドラマとか見ながら、刑事っていいな〜って思ってたもん。
でも、奥さんは、そんなんじゃなくて、小さい頃誘拐されて刑事に助けられたかららしいけどね。

明日香井双子の物語って、他でも読んだ気がするんだけどな〜?なんだったかな〜?気にせいかな?

くろちゃんの満足度(満点は★5つ):★★★

残響

2005年2月28日 読書
ISBN:4101396221 文庫 柴田 よしき 新潮社 2005/01 ¥620

あるクラブで歌っている歌手・杏子は、実はサイコメトリー能力がある女性だった。

場所に残っている思いや声を読み取る能力があり、その能力が発揮される状態になると、杏子の口からその思いを残した人物の声とセリフが発せられるというもの。

ただ、その能力は元の夫であるヤクザ者の石神に虐待されて居た時に発現したものであり、最初は石神と一緒にいないと発揮されない不幸なものであった。

一度、その能力を使い、ある事件を解決したことがあり、石神と離婚ししばらくたってから、また警察から協力の要請があった。

その要請に応え、見事事件を解決してから、杏子の周りに変化が生じてきた・・・。

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久々に、柴田よしきさんの小説で、私の好きなジャンルに近いものでした。

OLものとか、主婦もの、推理ものとかもいいけど、やっぱり「不思議もの」が好きです。

杏子が自分の能力をのばすにつれ、それを利用しようとたくらむ人物もふえてきます。
しかも、その能力は、杏子の心の呪縛となっている石神と関係のあるということから、杏子は能力がなくなってしまえばいいのに!って思っています。

そんな〜もったいないじゃんか!
せっかく能力ものびてきているのに、みすみすそれを捨てたいなんて思うとは・・・。
能力を温存したまま、なんとか呪縛から逃れ、成長する道を見つけろよ〜〜!!
とか思いました。

しかし、そんなことができるキャラなら、きっとそもそも石神にひかれて結婚とかしないんだろーなー。

くろちゃんの満足度(満点は★5つ):★★★

炎の条件

2005年2月27日 読書
ISBN:4334075967 新書 森村 誠一 光文社 2004/12/15 ¥1,260

夏居真由美は、婚約者にフラれ絶望し、死ぬためにアルプスの山に登ったが、運命の人・朝倉と知り合い、命を助けられる。

その後、真由美は銀座のクラブ・トパーズにホステスとして勤めるが、そこに新興宗教「お告げの天使」の教主・神居法泉が客として現れた。
真由美は法泉に目をつけられ、身体まで奪われそうになるが、すんでのところで逃げ出した。しかし、それが原因で教団から追われる身となってしまった。

実は「お告げの天使」は、犯罪の臭いもするかなり問題がある宗教団体。
そして真由美は、ひょんなことから命の恩人であり運命の人である朝倉と再会、そして愛するようになる。

しかし、朝倉は神居法泉に深い恨みがあり、復讐を誓っている。
朝倉は復讐をとげ、真由美との愛を成就することができるだろうか?

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ある尊敬する方から、いただいた大切な本です。
久々に、森村 誠一さんの本を読みました〜。
昔は、「人間の証明」を皮きりにいっぱい読んだんだけど、
最近はあまり推理ものとか社会派とかは読まなくなってきたので。
しかし、久々に読んでみるのもよいものです。
森村節は健在でした。

とくに緻密さとか、社会的背景とかは、なるほどなるほどと思い、一気に引き込まれました。
現実の事件とかとも、いろいろ照らし合わせてしまいましたよ。

ただ1点、どうしても朝倉が神居法泉に対してここまで復讐を誓うのかが、最後まで理解できませんでした。

妻と子どもが神居法泉の乗っている車にハネられて死んでしまった・・・というのが直接の原因で、ま、いろいろ細かいこととか、感じの悪い神居法泉の言葉があったにせよ、不幸な交通事故じゃんか?

復讐なんかしないで、新たな幸せを見つける道もあるのではないか?と思いました。

朝倉が特種部隊の出身で、たまたま復讐を実行できるだけの実力があったのが、いちばんの不幸だった気がします。

でも真由美など、朝倉が復讐をしたために助けられた人や信者もいっぱいいるし、終わりよければすべてよしって感じでいいか!
私の好きな「正義は勝つ!」って結末だったしね。

くろちゃんの満足度(満点は★5つ):★★★
ISBN:4150203369 文庫 テリー・グッドカインド 訳:佐田 千織 早川書房 2003/05 ¥714

「真実の剣」シリーズ第3部です。
第2部で、死の世界の「番人」の侵入を阻止したリチャードですが、息をつく暇もなく、またまた壮大なトラブルに巻き込まれます。

リチャードが番人を倒すために行った対策のヒズミみたいなものが、ミッドランズを被います。

ラールの血をひくリチャードは、ダーラを治めることになり、さらに平和的統治を望み、ミッドランズ全土をダーラの支配下に置くことに。その頃、ウロコの怪物(?)ムスリウィズが街にまで出没するようになってきた。

聴罪師であり、リチャードの婚約者カーランは、ゼットにより死の魔法をかけられて、死んだことになり安全を守っていたが、リチャードのところに駆け付ける間に何者かに襲われる。

光の信徒の宮殿では、院長が亡くなり、なんと前回リチャードを向かえに行き友となったヴァーナが時期院長に選ばれる。しかし、新たな敵ジャガンや闇の信徒の妨害に合い、ピンチに。

そして、数々のトラブルがやがてリチャードと線で繋がってくる。やはり事態を解決できるのはリチャードのみ。

さて、リチャードは無事にミッドランズを救うことができるのだろうか?
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久々の更新です。本は読んでたんだけど、まとめてカキコする余裕がなくて^^;
まー別に楽しみにしている人もいないだろうし、自己満の世界だからいいけど。

さて、ミッドランズは今回も大騒動です!

リチャードって、本能のままに動くことで数々のピンチを救うんだけど、意外とトラブルメーカーなのね〜^^;
それが魔導師の掟・その3と関係があるんだけどね。

けっこうリチャードのせいでトラブルに巻き込まれている人も多いんだけど、なぜか憎めないキャラ。

そして、今回はリチャードを信じることが、あるトラブルから救われるカギになっています。
やっぱりこのシリーズって友情に注目しちゃいますねー。

友情といえば、今回は私のお気に入りのキャラ、泥の民のチャンダレンがあまり出番がありません。がっくり。
そのかわりに、ガーのグラッチが大活躍します!ガーの成長ぶりも目を見張るものがあります。
もうグラッチ大好き。かわいい!

そして、リチャードとカーランは、やっぱりまだ結婚できません。でも泥の民の村で結婚するっていってたから、次回は期待できるかな?そのときは絶対チャンダレンも出てくると思うし、楽しみ!

それにしても、魔導師ゼットは、またもやリチャードとすれちがい。なんか最近、あんまり役に立ってないんだよね〜。
次回からのゼットの活躍にも期待。

くろちゃんの満足度(満点は★5つ):★★★★
ISBN:4102017011 文庫 デフォー 訳:吉田 健一 新潮社 1951/05 ¥540

英国人ロビンソン・クルーソーは、他国での生活を夢見て、自国を船で飛び出し、まずはアフリカに向かった。

そしてアフリカで捕虜になり、何年か過ごした後、命からがら抜け出し、ある船に助けられる。

その後、助けてくれた船長のはからいでブラジルに渡り、農場を経営しはじめたが、奴隷を買いに船出したところ、船が遭難し、一人無人島に流されることに。

そして、その無人島での28年に渡るサバイバル生活が待っていた・・・。
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おなじみ、サバイバルものの古典ともいわれる作品です。
サバイバルものは好きなんですが、なぜか読んだことがなかったので、ちょっと読んでみました。

ロビンソンの無人島での生活は、なんとも創意工夫にあふれ、さすがはスゲーや!と思わせるものがありました。

とくに野生のヤギを家畜にするところや、土器を作るところなんか、楽しんで読めました。

しかし、28年とはなんとも長過ぎる!何かやるにも年単位でやるもんだから、苦労のスケールがデカすぎて、実感しにくいんだよね〜。

あとやっぱり一人っきりだと、精神論のようなものに話がいき、宗教心にかなりのページがさかれているんだけど、キリスト教(プロテスタント?)って、イマイチわからない部分が多いかも。
ただ、宗教によってロビンソンの気持ちが救われたのはよくわかったけど。基本的に無神論者に近い日本人だったら、どんな感じになっていくんだろうな??と思いました。

私が大好きな「15少年漂流記」のほうが、一人で漂流したのではないので、話の広がり方が面白かったです。

そんで、さいとうたかをの「サバイバル」で、主人公の少年が無人島で「ロビンソン漂流記」にちなんでフクロウに「フライデー」という名前をつけるエピソードがありましたが、やっとその意味もわかりましたよー。

本家本元のフライデーは、人間でしたけど^^;しかも人食い人種の部族の一人。

フライデーは、ロビンソンの島で、あやうく他部族から食われそうになっていたところ、ロビンソンに救われ、深い忠誠心を感じるようになります。フライデーは、自分の島に帰れる手段を見つけましたが、ロビンソンと一緒でなければ帰らないと言い、しまいにはロビンソンがイギリスに帰れることになったときに、一緒に着いてきてしまいます。

いくらロビンソンに命の恩義を感じているからといって、ふつう一度ぐらい帰れよ〜とか思いますが、とにかく極端。その他にも、リスボンの船長やイギリスの未亡人など、ロビンソンに無償の友情を捧げる人善良な人が何人か出てきます。

基本的にメインは無人島だからあまり人は出てきませんが、出てくる人たちは悪者もいるけれど、良い人はとことん良い人であるところが、なんかいい時代だったんだな〜とか思いました。

くろちゃんの満足度(満点は★5つ):★★★

痕跡 (上・下)

2005年1月3日 読書
ISBN:4062749475 文庫 パトリシア・コーンウェル 訳:相原 真理子 講談社 2004/12/15 ¥750

検屍官ケイ・スカーペッタシリーズの最新刊。

リッチモンドの検屍局長の椅子を追われてから、コンサルティング業を営んでいたスターペッタの元に、古巣からある案件について協力の要請があり、スカーペッタと元刑事マリーノは、リッチモンドに舞い戻ることに。

その案件とはインフルエンザで死んだと思われていた14歳の少女の死因が不明なので、調査してほしいとのこと。

リッチモンドに戻ると、スカーペッタがいた頃は、アメリカ随一といわれていた検屍局は見る影もなくすたれ、スカーペッタが築いたものはことごとく踏みにじられていた。

そんな中、調査を進めていくうちに、マリーノに思わぬ出来事が起こり、訴えられる危機に。
また、スカーペッタの姪で、元FBIのスージーの同居人が何者かに襲われ、スージーの家の郵便受けに爆弾が仕掛けられる。

そして、スカーペッタの事件とスージーの事件が、びみょ〜なつながりを見せてくる。
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とくにハマッているわけじゃないんだけど、何となく続きが気になって読んじゃう1冊です。

いまいちハマれない原因は、登場人物全員の暗さ。なんかいつでもウジウジ悩んでいるんだよね〜。スカーペッタの恋人ベントン以外は、だいたい作中でず〜〜〜っとイライラしてる。そんで愛する者を傷つけないためにみんながみんな秘密主義だから、どんどん心の問題がコジれちゃうんです。

それでも仕事となったら目覚ましい活躍をするところがいいんだけど、中にはあんまり目覚ましい活躍をしない作品もあるんだよね〜。

でも今回は、スカーペッタらしい活躍が見られました!マリーノもなさけないところを見せつつ、最後は元敏腕刑事らしいところも見れたし。

あ、お約束のサイコ野郎も登場しました。(ちょっとかわいそうな面もあるヤツだけど。でも頭悪いね。裁判の国アメリカであんなかわいそうな目にあうなんて。あれは労災じゃんかー)

今度はルーシーがイマイチ。ベントンの行動も、あんまり意味なかった気が。ルーシーもルーシーらしい大胆な行動はするんだけど、別にしなくても事件の解決はできたと思うし、なんだかな〜。ルーシーはアメリカ版岬美由紀なんだから、もうちょっとしっかりしてくれよ。

たぶん、続きは何となく読み続けると思うんだけど、いつか
検屍官のスカーペッタ、敏腕刑事のマリーノ、プロファイリングのベントン、元FBIのクレバーな頭脳や強靱な肉体の持ち主のルーシー
の才能をフルに活かして、明るくスパーッと事件を解決してくれないものですかね〜。

くろちゃんの満足度(満点は★5つ):★★★

千里眼の死角

2005年1月1日 読書
ISBN:4094037926 文庫 松岡 圭祐 小学館 2004/07 ¥730

千里眼とよばれる臨床心理士であり、元航空自衛隊のパイロットでもあった岬美由紀のシリーズ。

世界各地で、不可解な人体発火事件が起きていた。

そんなときに催眠でおなじみの臨床心理士・嵯峨が、シンポジウムでイギリスを訪れていたときに、王室のシンシア妃の緊急カウンセリングを行うよう要請される。

シンシア妃は命を狙われていると思っており、混乱状態だったが、実際に命を狙われており、あやうく人体発火のえじきになりそうになったが、嵯峨がそれを阻止。

そして、お馴染み岬美由紀の登場!

この人体発火は国際的な陰謀であり、世界はとんでもない危機にさらされる。
スーパーヒロイン岬美由紀は、この陰謀を打ち砕くことができるのだろうか!?
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え〜と、岬美由紀は、今回もあばれてくれました!
でも、いつもと違うのは、美由紀の心理的な弱点をつかれ、あやうく宿敵メフィストコンサルティングに新しいトップにやられそうになる!!ってこと。

そんで、今までメフィストコンサルティングで、美由紀の敵であったダビデが会社をリストラされ、美由紀サイドについた(?)のもビックリ!!!

そんでもっとビックリなのが、今までウジウジしていた嵯峨が、なんともたのもしく成長しているところ!!

もっともっとビックリなのが、いままでにないぐらい世界が危機にさらされること。松岡さん、気持ちいいぐらいビシバシ壊してくれます^^;

今まで美由紀のスーパーヒロインぶりが、とっても小気味いい作品でしたが、今回はそれだけに終わらない深さのようなものを感じました。

ハイテクについても、とっても興味深く読みました。

くろちゃんの満足度(満点は★5つ):★★★

蠅の女

2005年1月1日 読書
ISBN:4334738087 文庫 牧野 修 光文社 2004/12/10 ¥500

インターネットサイト「オカルト部」のメンバーが、オフで廃虚を訪れたところ、偶然カルト教団の秘密の儀式を目撃してしまった。

それから、次々とメンバーが不可解な自殺をとげたり、姿を消していく。どうやらメンバーたちは一度殺され、謎の神によって復活させられ、あやつられているようだ。

城島をはじめとする残されたメンバーは、悪魔を呼び出して、それに対抗しようとする。半信半疑で呼び出した悪魔は、自らを「蠅」だと称する若い女の姿をしていた。

それから、神に対抗すべく、戦いが始まる!
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神と悪魔との戦い。
ふつうは神が正しくて、悪魔が悪いヤツなんだけど、
この作品では、神はただのかんちがいヤローでした。

なんだか、そのヘンがしっくりいかない。
スピード感はあるんだけど、何となく納得できないまま、
しかもちゃんと感情移入できないまま、
悪魔サイドが勝って終わっちゃったって感じ。

くろちゃんの満足度(満点は★5つ):★★
ISBN:4150203059 文庫 テリー・グッドカインド 訳:佐田 千織 早川書房 2002/02 ¥693

「真実の剣」シリーズ第2部、『魔導士の掟』の続編。

前作にて、宿敵ダークン・ラールを倒して、聴罪師のカーランとの恋を実らせることが出来た、探求者のリチャード。
しかし、平和な時は一瞬だった。

ダークン・ラールを倒したことにより、死者の世界と生の世界のベールが破れ、様々な災いをもたらされることに。ベールを閉じないと、死者の世界の<番人>がこちらの世界に飛び出し、この世は闇に包まれてしまうことに。そして、そのベールを修復できるのは、リチャードのみ。

そんなことは知らないリチャードは、カーランと結婚すべく「泥の民」の集落にいた。しかし、激しい頭痛に悩まされるようになり、そんなときに「光の信徒」を名乗るシスター3人組が現れた。シスターはリチャードの頭痛は魔導士としての才が原因で、光の信徒の宮殿で特別な教育を受けないと死にいたると語った。
すったもんだの末、リチャードは宮殿に行くことに。

一方カーランはゼッドに会いに泥の民の戦士チャンダレンらと共に、アイディンドリルに行こうとするが、途中不可解な戦闘に手を貸すことになる。戦闘は勝利をおさめるが、アイディンドリルにて、空前絶後の危機に陥ってしまう。

リチャードは、無事にベールを修復し、カーランの危機を救うことができるのだろうか??
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いや〜あいかわらず、ドキドキワクワクの冒険物語でした。
小難しいことが書いてなくて、単純明快なところがいいです!

いや、なんというかいろいろ事情は複雑なんですが、結局フォースvsダークフォース、陰と陽、光と影・・・といった永遠のテーマが盛り込まれているので、わかりやすいんです。
正義が勝つって気持ちがいいもんだし。

あと、グッドカインドさんが書く「友情」がとっても心地よいんです。

今回新しく友情を育んだ人たちは、まずカーランと泥の民のチャンダレン。チャンダレンは元々リチャードに恨みを持つ敵のような存在でしたが、カーランと旅を続け、一緒に戦うことによって、信頼関係を作っていきます。そして根っからの戦士であり、祖先を敬う気持ちを忘れないチャンダレンは、すごくストイックな魅力があり、しかも純朴な心の持ち主なところがとてもよかったです。

あとはリチャードは、凶暴な動物ガーの赤ちゃん(グラッチ)を助けたことによって、なつかれちゃって、友情を育みます。動物なだけに、純粋な友情に心あたたまる思いでした。

また、リチャードは、光の信徒のシスター・ヴァーナとウォレンという魔導士見習いと知り合います。ウォレンもヴァーナも、なんつーか職人タイプ。それぞれがやるべきことに従事し、3人の目的がリンクしたときは、友情パワーだなって感じでした。

ドキドキワクワクの物語はまだまだ続きます。第3部も楽しみ〜!

くろちゃんの満足度(満点は★5つ):★★★★

曼荼羅道

2004年12月30日 読書
ISBN:4087477630 文庫 坂東 真砂子 集英社 2004/12 ¥800

「富山の薬売り」を代々営んでいる一家で起こったミステリアスな物語。

横浜の企業に勤めていた麻史はリストラに合い、夫婦で祖父が住んでいた富山に引っ越し、家業である富山の薬売りをすることになった。元祖父の家で、祖父が残した書き付けを見つけ、曼荼羅道の存在を知る。

祖父の蓮太郎は、富山の薬売りだったが、若い頃マレーシアにて行商をし、現地にサヤという妻と勇という息子がいた。蓮太郎は戦争が激しくなってきて、サヤと勇を現地に残したまま帰国。戦後平穏な結婚生活を営んでいたが、なんとサヤと勇が引き上げ船に乗り、富山の蓮太郎の元にきてしまい、悩みながらも近くに家を借りてサヤを住まわし、妻の死後にはサヤと生活を共にしてい人物であった。

麻史は、薬売り稼業を始める前に、祖父の残した書き付けから、曼荼羅道を訪れることにし、不思議な世界にとらわれてしまい、過去に曼荼羅道にとらわれていた祖父の蓮太郎と遭遇。

麻文と蓮太郎の人生が交差し、そして・・・。
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またまた坂東真砂子ワールドな1冊でした。

若い頃の蓮太郎の冒険野郎っぽい情熱に、心を動かされました。あの時代に何かをやりたくてウズウズし、単身マレーシアに行き、薬の行商をやり、現地妻まで作っちゃうなんて、スゲーなと。

さらにスゴいのは、蓮太郎の現地妻のサヤです。蓮太郎が帰国してから、日本軍などからかなりヒドい目にあいながらも、日本人になりすまし、蓮太郎を追って、日本に来ちゃうってスゲー!

蓮太郎は日本に帰って来てからは、ただのオヤジになっちゃうけど、サヤの内なる情熱は、たぶん死ぬまで衰えなかったところもスゴいです。

曼荼羅道の不思議というよりも、この二人のドラマチックな人生がおもしろかったかも。。。

他にも第二次世界大戦の悲惨や、従軍慰安婦の件をはじめどんなにヒドいかったかなど、いっぱい綴られています。

麻史の妻・静佳も文中でいってたけれど、第二次世界大戦って私たちの中では、歴史の教科書の数ページにすぎないので、関連のニュースを聞いても全然ピンとこなかったけど、こうした形で読んでみると、かなりズンときました。

くろちゃんの満足度(満点は★5つ):★★★

善魂宿

2004年12月30日 読書
ISBN:4101323259 文庫 坂東 真砂子 新潮社 2004/11 ¥500

時は明治時代。天鏡峠の山壁に立つデカい合掌造りの家があった。昔はそこそこの集落があったようだが、今は母と息子が2人だけでひっそり暮らしていた。

ほとんど訪れる者もいないが、時々旅の者が迷いこんできて、一夜の宿を借り、宿代としてさまざまな話をしていく。

最後に元その集落に住んでいた者が訪れ、その集落の特殊な生活の話をしはじめる。
そしてその集落にまだひっそり母子で住むようになった歴史があかされる・・・。
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「死国」「狗神」ほどツボにハマる感じではないけれど、坂東真砂子さんの独特の世界観のようなものが感じられる1冊でした。

飛騨・白川郷の合掌造りの村の独特な大家族制度というものが描かれていて、すごい興味深かったです。

この大家族制度は、消滅して何十年もたっているとのことですが、100年以内の日本にそんなものがあったとは驚き。なんというか・・・例えばパプアニューギニアとかにあったら驚かないんだけど、今じゃ東京からたぶん3〜4時間もあれば行けちゃうようなところにあっただなんて。

ただでも興味深いテーマなのに、板東さんの筆にかかった日にゃ〜、さらに不思議な世界がひろがり、ゾクゾクしますです。

一度、飛騨・白川郷に行ってみたいなと思いました。行く前には、絶対もう一度本書を読んで、想像力をふくらませながら行かなくちゃね!

くろちゃんの満足度(満点は★5つ):★★☆
はじめて秘密日記を書いてみます。

窓際の死神

2004年12月25日 読書
ISBN:4575235113 単行本 柴田 よしき 双葉社 2004/12 ¥1,575

「おむすびころりん」と「舌きりすずめ」の二話をモチーフに描かれた寓話ミステリー。

悩み多きOL多美と麦穂の周辺に、死神があらわれた!?

「おむすびころりん」
好きだった男が別の女と婚約し、多美はその女が死ぬところを想像しはじめた。
そのころ、多美は会社の窓際族・島野と話すが、実は島野はその会社の社員ではなく、死神だと告白される。

「舌きりすずめ」
小説を書き、賞に応募を続けながら、OL生活を続ける麦穂。
落選をし続けていたが、そんなときに同僚の片野京美が、麦穂の応募していた賞をとってしまい、麦穂はOLをやめる。
そんなときに、元の会社の社員であった死神の島野が麦穂にアプローチしてきた。

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この作品もある縁があって、読んでみた作品です。
「ワーキングガールウォーズ」に続き、ミステリー仕立てにはなっているけれど、OLの心の悩みや実態みたいなものが、切々と書かれている作品に思われました。

「死神」が出てくるってところは意外だけど、この死神にはまったくにしてイライラさせられました。
たぶん、主人公にとっても、いきなりOLの現実生活に死神があわられるって、全然信じられないと思うけど、ちょっと信じちゃうあたりが、このOLたちの悩みの深さってのが、うかがわれます。

「ワーキングガールウォーズ」の翔子のような強い女性の前に死神が現れても、きっと気づかないんじゃないかな?気付いたとしても、鼻であしらっていたかも^^;

そんで結局死神って、多美と麦穂に強く生きる決心をさせて、記憶を消して去っていきます。
一応、周辺に死人は出てはいるんだけどね。

なんだかな〜。この死神って、死神という職業に適してないんじゃないかと心配になりましたよ〜^^;
なんとなく新井素子の「絶句」に出てきた、宇宙の交通事故を起こしてオロオロしながら空間をねじまげてしまったオジサンを思い出しました。

くろちゃんの満足度(満点は★5つ):★★★
ISBN:4488587011 文庫 L.M.ビジョルド 訳:梶元 靖子 東京創元社 2001/01 ¥1,029

時は15世紀末のルネサンス時代、舞台は北イタリアのモンテフォーリアという小国。

金細工師であり魔術師であるベネフォルテと15歳の娘フィアメッタは、平和に暮らしていた。
フィアメッタは、魔法の才能がありながらも父親によって子供扱いされ、さらに結婚話も進まないことに不満を持ちながらも、父親を尊敬し、修行に励んでいた。

そんなある日、2人は公爵の晩さん会に出かけたが、その最中に隣国の裏切りにより、魔法と武力によって城が制圧されてしまう。ベネフォルテも魔法で戦い、フィアメッタと共に城を脱出したが、ベネフォルテは途中で息絶える。しかし、魔法のスピリットリングに偉大な魔術師の魂を召還するため、敵に遺体が盗まれてしまった。

一方、フィアメッタが密かにあこがれていた近衛隊長ウーリもこの争いで亡くなっていたが、弟・トゥールが田舎からモンテフォーリアに出てくる途中、フィアメッタと運命的な出会いをする。

フィアメッタとトゥールは、魔法の指輪にみちびかれてか?恋におち、父と兄の亡骸を取りかえし、敵と戦うために、いざモンテフォーリアに!
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全体的には痛快な冒険と恋の物語でした。

また、生活と魔法が解け合ってる具合が、ちょうどいい感じの作品でした。金属と魔法と宗教、どれもバランスよくおたがいに、うまくからみあっているところが、生活感にリアリティを感じさせます。

トゥールは鉱山に働き、鉱山で地精(コボルト)と接することのできる能力の持ち主。しかし、あやうく鉱山の事故で命を落としかけ、兄を頼ってモンテフォーリアに出てきますが、鉱山で働いた経験と不思議な能力が、この冒険に大いに役立ちます。
フィアメッタは父から受け継いだ才能と身近で魔法に接してきた経験を生かして、敵に立ち向かっていきます。

どちらも、最初は自分でも気付いていなかった才能を発掘し、冒険しながらおおいに成長していくところが、「がんばれ!」と応援したくなる感じでした。

しかし、フィアメッタが15歳にしては、すごく子どもっぽく書かれていたところが、イマイチかな〜?父親に子供扱いされてたからかな?何となくずっと小学校高学年ぐらいのイメージがあったよ。

くろちゃんの満足度(満点は★5つ):★★★★

ゼンダ城の虜

2004年12月24日 読書
ISBN:4488505015 文庫 アンソニー・ホープ 訳:井上 勇 東京創元社 1970/02 ¥966

昭和初期から親しまれてきた古典的冒険小説。
同作とその後日冒険談の「ヘンツオ伯爵」が収録されている。

時は19世紀。
英国のある貴族の次男坊のルドルフ・ラッセンドルは、才能がありながら次男坊という境遇からか自分をもてあましていた。
そこで、ドイツの近くのルリタニア王国の新国王の戴冠式に向かうべく旅に出た。

途中、新国王であるルドルフ5世に戴冠式の前日に偶然バッタリ会うが、なんと新王ルドルフ5世は、ルドルフ・ラッセンドルにウリふたつ。(名前まで一緒!)
そこで意気投合し、飲み明かしていたときに、王が、王位剥奪を狙う弟のミヒャエルのワナに落ち、監禁されてしまう。

戴冠式に出ないと王位は、ミヒャエルに移ってしまうので、なんと王とウリふたつのルドルフが、王と入れ代わって戴冠式に出て、王を奪還できるまで、代わりをつとめることに。
そしてヒヤヒヤもんの芝居を続けるうちに、ルドルフは王の婚約者である姫と恋におちてしまう。

王は無事戻ってくるだろうか?そして二人の恋の行く末は?
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ドキドキワクワク&けっこうスカーッとする冒険物語でした。
冒険物語につきものの勢いとスピード感にあふれていました。

19世紀ってことで、城が出てきて剣や馬を使っていたりするけれど、汽車も出てきたりと、古い部分と革新的な部分が入り交じったところも、なかなか魅力的。

登場人物も、ルドルフは自由で新しい気質の人間。ルリタニアでルドルフの側近となった人たちも、古い体制にしがみつかずにとんでもないことをどんどんやらかしていきます。
しかし、一見古臭いような一徹で律儀な心は失っていないところが、物語に引き付けられる一因となってます。

なんと、この作品から「ルリタニアン」という新しい形容詞ができたそうです。暗黒時代における近代的政府のことを表現してルリタニアンというらしいです。へぇ〜。

くろちゃんの満足度(満点は★5つ):★★★★
ISBN:4334737978 文庫 柴田 よしき 光文社 2004/12/10 ¥620

なんちゃってクロネコの「正太郎」シリーズの短編連作集。

ミステリー作家の桜川ひとみの飼い猫・正太郎の特技は、推理。実はネコはネコや他の動物と意志の疎通(会話?)をはかることができ、正太郎がそのコネクションと明解な推理で事件を解決していく物語。

今回の短編集では、正太郎の視点で直接事件を解決していく物語と、人間の視点で正太郎が事件を解決する物語が交互におさめられています。

「愛するSへの鎮魂歌」 (人間サイドの物語)
作家・桜川ひとみをストーカーする男の物語。その男の野望を、最後の最後に正太郎が、トンチキに阻止。

「正太郎とグルメな午後の事件」(正太郎サイドの物語)
桜川ひとみが雑誌の京都・グルメページの対談に、同じ作家の先輩で正太郎のモトの飼い主・浅間寺と共に参加。偶然起きた事件を正太郎と浅間寺の飼い犬サスケと共に解決。

「光る爪」(人間サイドの物語)
不倫をしていた妻が、ある殺人事件にかかわる。
最後の最後に正太郎が、ひょうたんからコマ。

「正太郎と花柄死紋の冒険」(正太郎サイドの物語)
正太郎のマンションにて、ネコの死体が発見された。
マンションの飼い猫&犬たちが、捜査に乗り出す。
そして、驚愕の事件が!

「ジングルベル」(人間サイドの物語)
クリスマスを寂しく過ごさないために奔走するOLの物語。
最後にまたまた正太郎が、トンチキに事実をアバく!

「正太郎と田舎の事件」(正太郎サイドの物語)
桜川ひとみと浅間寺、正太郎が、
作家仲間の実家の家に訪問したところ、殺人事件が発生!
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この本もある縁があって、読んでみました。
いや、元々柴田よしきさんファンではあるんですが、
最近あまり推理小説は読まなくなったのと、
猫が探偵ってどうよ?って気がして、
なかなか触手が動かなかったんです。

ネコと人間って基本的に言葉のやり取りができないわけだから、
ネコがあざやかに事件を解決っていっても、途中イライラが高まったり、
「ホントかよ?」とか思って、なかなか楽しめない。
思いっきりファンタジーやSFになっちゃえば、
意志の疎通ができるって設定なので、楽しめるんだけどねー。

でも「正太郎」は案外、ネコ探偵でもイケました。
動物仲間の犬のサスケや猫のレオなどとのやりとりも絶妙だったし、
桜川のキャラも笑えたし、浅間寺のおっさんもなかなかナイスだった!

いつか長篇も読んでみようかな??

くろちゃんの満足度(満点は★5つ):★★★
ISBN:4150202974 文庫 テリー・グッドカインド 訳:佐田 千織 早川書房 2001/09 ¥693

父を殺された森の案内人リチャードは、ある日、森で何者かに追われていた女性カーランと知り合う。
カーランは、境でへだたれ本来なら行き来できないはずの隣の国・ミッドランズの住人だった。

ミッドランズは魔法が横行する国で、ウェストランドはまったく魔法のない国。それを分ける境が弛んで、悪が暴行し出しているのだ。その原因は、悪の魔王ダークン・ラール。

その野望を破るため、カーランとリチャードの友だちであり実は偉大な魔道士であったゼッドとリチャードが、冒険の旅に出る物語!

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う〜ん、正当派ファンタジーって感じ。
不思議な世界観がとてもよかったです。
登場人物のキャラも、かなり魅力的!

リチャードは<探求者>という者に任命され、今回の野望をやぶることのできる唯一の人物。そしてカーランはうまれつきの<聴罪師>という者。この二人は恋に落ちますが、絶対に恋を成就できない運命となっています。

不思議な世界での冒険物語は、もちろん心踊るものでしたが、リチャードとカーランのびみょ〜な心の動きも、かなり繊細に書かれておりナイスでした。
そして、運命さえも変える愛の強さは、かなりの感動もの!

くろちゃんの満足度(満点は★5つ):★★★★

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